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2021.11.12

住宅で省エネ説明義務、4月から 脱炭素へ規制加速

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今、住宅業界が大きく揺れている。4月から家づくりのルールが変わり、小規模な住宅などを対象に省エネに関する「説明義務制度」が始まったからだ。

住宅には省エネルギー基準が設けられている。ただ規制はそれほど厳しくなく、これまでは基準をあまり意識せず住宅を建てられた。4月1日以降は「基準に適合しているか」「基準に適合しない場合はどうすれば適合できるか」を、建築士が建築主(施主)に説明しなくてはならなくなった。

説明義務制度は建築物省エネ法に基づき、床面積300平方メートル未満の小規模な住宅などで新築や増改築を行う際に、建築士が建築主に対し省エネ基準への適合などに関する書面を交付して説明するもの。建築士に設計を委託する注文住宅が主な対象で、マンションや建売住宅の売買時、賃貸住宅の貸借時には適用されない。

4月以降の建築物省エネ法の施行内容

そもそも省エネ以外にも、住宅で確保すべき性能はある。例えば耐震性能。耐震基準に適合しない住宅は法律で建てられない。これに比べて、省エネは規制が緩い。

省エネに関する規制は強制力の強い順に、「適合義務」「届け出義務」「説明義務」の3段階ある。適合義務は耐震基準と同様、省エネ基準に適合しないと建築確認が通らず、着工できない。導入は2017年4月で、まず非住宅(ビルなど)が対象となり、2000平方メートル以上の規模からスタート。21年4月1日から300平方メートル以上に拡大した。

一方、住宅は適合義務を課さないが、300平方メートル以上は着工前に省エネ計画を所管行政庁に届け出る義務を設けた。基準に適合しない場合は計画の変更などを指示・命令されることがある。

300平方メートル未満の住宅と非住宅を対象とする説明義務は、建築主が基準適合を求めない場合は不適合のままでも建てられる。また、建築主が「説明は不要」という意思を書面で示した場合は適用されない。こうした措置を「手ぬるい」と指摘する声も住宅業界にはある。

住宅の規制強化へ、政府が閣議決定

住宅分野でのエネルギー消費量の抑制は待ったなしの状況にある。

菅義偉首相は就任直後の20年10月、50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると表明した。それを達成するには、「30年に13年度比26%削減」という現行目標のままでは難しい。目標の上積みをにらみ、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の見直しが進んでいる。

住宅分野では、政府が3月19日に閣議決定した住生活基本計画で、30年における住宅ストックのエネルギー消費量を13年度比で18%削減する目標を掲げた。ただこれには「地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の見直しに合わせて変更する」と含みを持たせている。住宅に対する省エネ規制は今後一層、強まる傾向にあると言っていいだろう。

脱炭素に向けた政策が急展開するなか、説明義務制度が始まる。だが一息つく間もなく、次のステップに進まなければならなさそうだ。従来通り「説明→届け出→適合」と規制レベルをゆっくり引き上げていく時間的な余裕はない。諸外国に比べて低いと言われる省エネ基準の強化も求められる。

はたして、最も規制レベルの高い「住宅の適合義務」は可能なのか。検討にあたって国土交通省はまず適合率の進捗や事業者の習熟度を調査するはずだ。その際、良い結果が得られなければどうするのだろう。

18年度調査で、300平方メートル未満の住宅(新築など)の適合率は73%、省エネ計算ができる工務店や建築士は半数程度だった。300平方メートル以上の非住宅は適合率が90%を超えてから義務化している。市場の混乱を嫌う国交省がそれでも適合義務化へと大なたを振るうか、注目だ。

紙ベースの建築行政、審査こなせるか

審査側の問題もある。仮に適合義務に踏み切ったとして、全ての建築確認で適合性を判定できるとは考えにくい。いまだ建築行政の手続きの多くは紙面ベースで、電子申請が進んでいないからだ。

新設着工全体のうち、300平方メートル未満の住宅は84%を占める(17年度時点)。適合義務化した場合には、膨大な数をこなすために審査の効率化が欠かせない。建築行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)は必至だが、当分の間は全数チェックをあきらめ、住宅は一定のルールの下で「特例」として手続きを簡略化する考え方もある。ただし、違反したら厳罰に処すなど、建築士のモラル低下を防ぐ工夫は必要だ。

現行の省エネ規制は成果を把握しやすい新築を主な対象にしている。しかし今後、人口減少に伴い新築は減る。既存住宅の性能向上も忘れてはならない。

住宅ストック約5000万戸のうち、省エネ基準に適合している住宅はわずか8%しかない(15年時点)。「省エネ改修や断熱改修、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス=エネルギー消費を実質ゼロにする住宅)改修を強力に推し進める」「住宅市場から脱炭素への貢献度が低い建材・設備をなくす」「売買や貸借の不動産取引時にエネルギー性能の表示を義務づける」といった施策をけん引し、住宅ストック全体の省エネ性能を底上げすることも大きな課題だ。脱炭素を加速させる政策の即応力が問われている。

(日経抜粋)

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